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登場人物に東日本大震災を経験させた小説、乃南アサ「いちばん長い夜に」

※ネタバレはありません。

いちばん長い夜に (新潮文庫)

お前は何様だという話だけど、乃南アサ知名度が小説の面白さに追い付いていないと思う。昔から好きでちょこちょこ読んでいる。

何となく読んでみた「いちばん長い夜に」がとても良かった。

前科のある元受刑者の芭子と綾香。年齢も性格も違う身寄りのない二人が、出所後に知り合いもいない町でお互いに協力しあいながら素性を隠して暮らすお話。

あれ、何かこの設定に見覚えがあると思ったら、このシリーズ、何年か前にドラマ化されていたやつだ。ドラマはちゃんとは観なかったけど、設定が印象的だったので心に残っていたようだ。主演は上戸彩飯島直子乃南アサ知名度低いとか言った奴誰だ!

すみませんでした。

いつか陽のあたる場所で DVD-BOX(本編5枚組)

さてこの「いちばん長い夜に」は、芭子&綾香シリーズ三部作の最終話。

順番は「いつか陽のあたる場所で」「すれ違う背中を」「いちばん長い夜に」

実は私はこれが三部作ということを知らず、最初の二作も読まずにいきなり「いちばん長い夜に」を読んでしまったのだけど、普通に楽しめた。でもしっかり読むならやっぱり三部作を順番に読んだ方が良かったかもしれない。

というのも、それまで何とか目立たず平穏に暮らしてきた芭子と綾香それぞれに、この「いちばん長い夜に」で大きな転機が訪れ、二人の心の葛藤がとても丁寧に描かれているから。

もう少し踏み込んで書くと、物語の中で登場人物たちは東日本大震災を経験する。そしてその経験は物語の中でとても重い位置を占める。

震災の描写がやけにリアルだと驚嘆しながら読んでいたら、そのほとんどが作者自身の経験に基づく描写だったということがあとがきで明かされている。

正直に言うと、扱うテーマがテーマなので、東日本大震災で甚大な被害にあった人には非常に勧めにくい小説だ。しかし私のように、直接的な被害を受けず、あの震災をともすれば「過去のこと」と認識している人間は読んでみてもいいかもしれない。

少なくとも私は、この本を読んだあとは色々と考えさせられた。

 

ちなみに余談だが、当ブログの「書評」カテゴリでは小説の映像化であてられたキャストをよくけなしているが、この芭子&綾香シリーズの上戸彩飯島直子というキャスティングはイメージにかなり合っていて良かったと思う。ドラマも観ておけば良かった。このシリーズを読む機会があったら、ぜひ上戸彩飯島直子を思い浮かべながら読んでみてほしい。