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地中海料理と人がテーマの短編集「チーズと塩と豆と」角田光代、井上荒野、森絵都、江國香織

※ネタバレはありません。オムニバス短編集の書評に野暮な注釈だけど。 

チーズと塩と豆と (集英社文庫)

角田光代の本を借りようと思って図書館に行ったら目についたので借りてきた。

私は角田光代江國香織の本は読んだことがあったけど、森絵都は読んだことないし、井上荒野は名前自体が初耳。

四人の女性作家がそれぞれスペイン、イタリア、フランス、ポルトガルの地中海地方の「料理と人」をテーマに書いた短編集。設定舞台柄、登場人物は全員が外国人。でも実力派作家の筆致のおかげで、きちんと感情移入できる。

かなり縛りのきついテーマなので四人それぞれの個性が際立つ作品集だった。

 

角田光代「神さまの庭」

4作中、料理の描写がピカイチ。出てくる料理がことごとく美味しそう。物語の軸をぶらさずしっかりテーマをまとめながらも、必ずしもすっきりと終わらせず、読者の心に絶妙なざらつきを残す角田作品らしい作品。

 

井上荒野「理由」

4作中、料理というモチーフの登場のさせ方に一番こじつけ感があったかも。年の差夫婦の愛の話。ただキラキラしたり切なかったりするのでなく、憂鬱で気だるい大人の揺れる恋愛感情を描けるのは、女性作家の面白さだと改めて感じる作品。

 

森絵都「ブレノワール

4作中、一番ストーリーに動きのあった作品。これだけ起伏のある物語が短編にまとまるなんてすごい。密度の濃い話なだけにやや駆け足展開だし、最後の結末はどうしても読めてしまうけど、それでも納得の面白さ。料理というテーマを最も上手く消化している作品だと思う。

 

江國香織アレンテージョ

文章を構成する言葉の全てにこだわりを感じるのは、さすがの江國作品。4作目にこれを持ってこられることで、江國香織の描写力の凄さを実感させられる。文章の美しさは存分に堪能できるけど、作中のちょっとした謎は解明されないというのも、良くも悪くも江國節。

 

さらっと読めるけどそれだけじゃない、読んでいて程よく心がざわつく素敵な短編集だった。活躍している女性作家の作品が一気に読めるのも、お得感がある。テーマの統一感ががっちり保たれたオムニバス短編集の秀作だと思う。

そしてヨーロッパに行きたくなった。