未来メモリー

未来の自分に誇るメモリー

話を聞かない老人に怒るバスの運転手

バスに乗っていたら突然、車内アナウンス用のマイクを通して「あっ!ダメダメ早いよ!」と運転手の怒った声が聞こえた。

どうやらバスが停止している合間に運転席脇の機械でICカードにチャージをしようとしたおばあさんが、運転手の必要な操作を待たずに手元のお金を機械に入れてしまったらしく、入れたお金の一部しかチャージされずに残りは小銭に両替されてしまったらしい。

「こちらでボタン押すのを待ってもらってからお金を入れてくれないと、ちゃんとチャージできないよ」

運転手の声には苛立ちが滲み、会話の内容はがら空きの車内に丸聞こえだった。

「ごめんなさい。ご迷惑おかけして」

モゴモゴと謝りながら、おばあさんは両替口から出てきてしまった小銭をかき集め、気まずそうに元の席に戻った。

車内の雰囲気が重苦しくなったことに気付いたのか、運転手は取り繕うかのように、今度はマイクを通さずに

「次は気を付けてね。1000円だけならチャージはできてるから」

とおばあさんに声をかけていたが、一度淀んだ空気は晴れなかった。静まり返った車内の中で「次は、○○です」と次のバス停を告げる自動アナウンスだけが空虚に響く。

そのアナウンスを聞きながら、私はぼんやり考えていた。

ああ、これって小さな一つのディストピアだな、と。

 

色んなものが機械化されて便利になって、現役の若い世代は当たり前のようにそれを使いこなすけど、高齢者がそれに適応するのは難しい。

使い方をいちいち聞けば煩わしがられ、一方で、自分の勘で使おうとすると機械がエラーを出したりする。

おそらくあのおばあさんも、さっさと用を済まそうと運転手に気を遣ったゆえの、先走りだったのだろう。

しかし自分は気が回ると思い込んでる高齢者ほど、無用な先走りをしてしまいがちなのも、また事実だ。「あー、ハイハイ、そうだね」と相手の話をきちんと聞かずに動き始めて、結果余計なことをしてしまう高齢者はとても多い。

私たちはあの運転手にも成りうるし、あのおばあさんにも成りうる。

話を聞かない高齢者に、高齢者はそういうものだと余裕を持った態度で対応しなくてはならない。

操作方法がわからない機械に遭遇したときは、思い込みで適当に触らずに、きちんと使い方を理解しなくてはならない。

どちらも、相当心がけておかないと難しい。

技術が進んで色々なことの機械化、自動化が進んでも、それを使いこなす人間の心はきちんと追い付けるのだろうか。