未来メモリー

未来の自分に誇るメモリー

知らない人のスカートを理髪用ハサミで切った話

今朝の通勤途中、私の少し前で自転車を漕いでいた女性が何もないところで不自然に自転車を止めて自転車から降りた。
どうしたのかと思ったら、彼女の穿いていたロングスカートがガッツリと自転車の後輪中心部分に絡まっている。
自転車の前かごには荷物が載っていて、降りるのがやっとで身動きが取れず困っているようだ。
出勤時間まで余裕があったので、私も自分の自転車を停めて彼女を手伝うことにした。

声を掛けてまず自転車を歩道の端に移動させ、二人で絡まったスカートを外そうとするも、ゆうに2周分はぐるぐると巻きついているので、引っ張ってもほとんど取れない。
スカートの素材がフワフワとした柔らかいものだったことも災いしたようだ。
引っ張ろうにもほぐそうにもスカートは全く外れる気配がなく彼女はとうとう「絡まっている部分を切っちゃってもいいんですけど…」と言い出した。
私も他に方法が思いつかなかったが、とても素敵なスカート。ユニクロのものではないだろう。切るというのは苦渋の決断ではなかろうか。再度彼女の意向を確認すると、やはりやむを得ないからスカートを切ると言うので、動ける私がどこかでハサミを借りてくることにした。
とは言っても近くに商店がない。一本入った路地にようやく小さな美容室を見つけたので事情を話し、ハサミを借りられるか尋ねてみる。
お客さんの女性の眉を整えている最中だった美容師のおばちゃんが「あら大変」と快くハサミを貸してくれた。
「工作用の普通のハサミでいいのですけど…」と言ってみるも
「今これしかないわ」と差し出してくれたのは理髪用のハサミ。
「先が尖っているから気を付けてね」とのアドバイスを背に女性の元に戻った。

切る前にもう一度本当に切っても良いか確認して、できるだけスカートが長く残るようにハサミを入れる。女性は身動きが取れないので、切るのも私だ。

薄地のスカートが車輪に巻き付いて太い紐のようになっていたが、切れ味のよい理髪用のハサミを借りたのがかえって良かったのかもしれない。大して力も入れずに、素敵なロングスカートはジャキジャキと切れた。

「ありがとうございました」と言ってようやく自転車から離れた彼女のスカートは、よく見ると膝丈の裏地に、くるぶし丈の表地と二層になったデザイン。その表地の一部がチャイナドレスより大胆なスリット入りになり、裏地が丸見えだった。

切った身としてはすごーく申し訳ないことをしたような気分だが「裏地のついてるスカートで良かった」と女性が笑っていたのでちょっと救われた。

 

私が美容室にハサミを返しに行っている間、女性は車輪に引っ掛かったままのスカートの切れ端を再度外そうと試みたが、やはりビクともしなかったようだ。

ここでそろそろ私も時間切れになったが、たまたま近くに彼女の知人が住んでいるので連絡して来てもらうと言うので、私はその場をあとにした。

しかし朝から知らない人のスカートをジョキジョキすることになろうとは。

彼女は無事に知人と連絡が取れたのだろうか。

そしてロングスカートで自転車に乗ることは危険ということを学んだ。