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未来メモリー

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リアル?大袈裟?面白すぎるママ友小説「森に眠る魚」角田光代

 ※ネタバレはありません。

森に眠る魚 (双葉文庫)森に眠る魚 (双葉文庫)
 

 ママ友と聞くと「怖い」「ドロドロ」「女の世界」とネガティブなイメージを持つ人が少なからずいると思うが、それも小説やドラマになればエンターテイメントだ。

私は女性作家が女性特有の心の動きを切り取る小説が大好きである。

「こんな人、いないでしょう」と思いながらも、読み進めていくうちに「何かの行き違いで、自分(あるいは周りの女性)がこんな風になっていくことが、全くないとは言えない…」と思わせられる女性作家。

そんな女性作家、角田光代がママ友を題材に書いた小説が「森に眠る魚」。

この小説は5人の女性それぞれの目線で物語が進んでいく。しかもほぼ均等に目線が交代するので、最初のうちは「あれ、これは誰だっけ?」と混乱しがちなのだが、それぞれの個性がつかめていくうちに、読者の中で登場人物の「顔と名前が一致する」ようになる。

 

いわゆる元ヤンで、言動の幼い繭子。

見た目も中身もセレブなマダムだが、秘密を抱えるかおり。

他人の目を気にしがちな、平均的な家庭の容子。

小奇麗だが親しみやすく、人望のある千花。

地味で素朴だが、心優しい瞳。

 

この5人が知り合い、お互いが交流することで、少しずつ日常に変化が起こるさまが妙にリアルに描かれている。

 

読者の目線でも、最初はそれぞれの登場人物に好感をもって読めるのだが、話が進むうちに、それぞれに対して「あれ、この人ここが変じゃない?」と思うようになる。

それもまた、仲が深まると粗も見えてくる実際の人間関係のようで妙にリアルだ。

この作中で私が一番印象に残ったのはこの部分である。

だったらあの人たちと離れればいいのだと彼女はわかっている。人は人、自分は自分なのだから。なのにそうすることができない。なぜできないのか彼女にはわからない。まるで無力のちいさな子どものように、気がつけばあの人たちをさがしてしまう。

 

この文章は、ママ友トラブルの渦中にある人の心理の核心をついている。

逆に言うなら、こういう思考の沼にはまることを上手に回避できれば、ママ友トラブルとも無縁で心穏やかに過ごせるのではないだろうか。

この作品をリアルと感じるか、大袈裟と感じるかは読者のおかれた環境次第かもしれないが、読み物として面白いのでオススメである。

ただし男性が読んだ場合は、下手なホラーより余程怖く感じるかもしれないので、その辺りは自己責任で…。